2011年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2011年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

知識経営論2

日付
2011年05月10日 18:30~
場所
桑沢デザイン研究所
概要
知識デザイン:デザインによるイノベーション
受講生の感想

記:水野 可奈子

第8回 記:水野可奈子

学生を卒業して約二十年。毎週二回も講義なんて、途中で寝ちゃったり、行くのが億劫に
なったらどうしよう・・。
などという心配は全くご無用だったことに初回講義で気がついた。
一秒たりとも集中力は途切れることなく、気がつくと今日も講義終了・・・。
おもしろい、おもしろすぎるぞSTRAMD!!

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知識経営論 第二回 デザインによるイノベーション

二回目となる知識経営論。今回もまた紺野先生から、
「みなさんはもちろんご存じかと思いますが・・・」
と当たり前のように繰り出される、私の全く知らない人名や書籍の数々。
もちろん知ってるぜ!というオーラを背中に漂わせつつも冷や汗は隠せない。
そして帰宅後速攻検索。まずは今回の検索人名を、聞き逃してしまった人のためにも、参照。

・マイケルサンデル
アメリカの政治哲学者、コミュタリアン。ハーバード大教授。
コミュニタリアニズムの代表的論者。
著書に『正義の話をしよう』←この名前は聞いたことがあった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB

・ヨーゼフシュンペーター
オーストリアの経済学者。起業者が行うイノベーションが経済を変動させる
という理論を構築した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC

・レスターサロー
アメリカの経済学者。マサチューセッツ工科大学経済学・ 経営学教授。
著書に『ゼロ・サム社会』『資本主義の未来』『日本は必ず復活する』等。
http://www.amazon.co.jp/%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5-%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BBC-%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%BC/dp/4484961121/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1305530834&sr=8-3

今回の講義は、モノのデザインにおいて日本がもはや劣勢である事、
キャッチアップ戦略の鉄則どおり、今まさに韓国や中国に追い抜かれる側になった話を通し、
中国・インドなど新興市場の拡大/再来と、21世紀は知識資産からなる経済、つまり無形資産を持つ企業が
創造性経済の波に乗る事ができる、という展開へ。今課題となる3つのイノベーション、そして
リバースイノベーションというキーワードと共にインドの簡易型冷蔵庫チョットクール、タタ自動車の事例、
最後はいよいよ知識創造の方法論へと話が進み、暗黙知と形式知について及び、理想と現実の行き来の話に
引き込まれたところでタイムアップとなった。

約2.5時間強を通して、今回私が印象に残った事柄は・・・

1. モノからコトへ。の一歩先へ、コトの中にモノを組み込む
2. 21世紀は予測不可能な激動の時代
3. 日本型経営、共通善
4. コアコンピタンス、能力の罠
5. 理想と現実を行き来する

1. モノからコトへ。の一歩先へ、コトの中にモノを組み込む
モノ売りからコト売りへ。なんていう言葉はよく耳にするし、自分でも仕事で使うことがある。
それがすでに古かったとは!まるで脳トレのアハ体験のように、気持ち良いくらいの気づきだった。

2. 21世紀は予測不可能な激動の時代
それに比べて19世紀20世紀はわかりやすい敵とわかりやすく戦っていれば良かった時代。
がむしゃらに働いてモノを造って売っていけばリッチになって自動的に幸せになれる。と、
実際私も思っていた。しかし、ITバブル崩壊、リーマンショック辺りから、おや??と違和感を感じ始めた。
講義の際にスライドに映し出された折れ線グラフのように、21世紀を目指して右肩上がりに
階段を猛烈に上っていた頃は、上りきったところにフラットな幸せな世界が広がっている・・・という
感覚を持っていたのに、どうやら違うらしい。まさかここからが激動の時代だったとは。
予測不可能な競争相手、ただ戦えばいいわけでもない、そんな時代が到来した。
これまで死にものぐるいで汗水垂らしてきたのに、ご褒美はないのか・・。

3. 日本型経営、共通善
欧米型の個人主義経営が疑問視される時代になったが、かつての日本型経営のように
みんなで赤提灯に行ったり運動会に行ったりするのもちょっと違う。
この話もかなりうなづけた。欧米型の個人主義経営について、私は完全に否定派で、
やっぱり日本の風土に合ってない気がしてならない。古くからの日本型経営を
完全に復活させればいいとは思わないが、見直す点は多々あると、常日頃思っていた。
たとえば、女性社員を男性社員のお嫁さん要員にするような風潮。
これの何がいけないのかわからないし、むしろ素晴らしい文化ではないだろうか。
と言うと語弊がありそうだが、女性社員を男性社員と同じように、機会を与えたり、
能力を評価するのはとても重要で大前提である。その上で、お年頃の異性が職場で
目出度くゴールインして何が悪いのか?売れ残りや少子化を防ぐためにも
もっと肯定すべきだと思う。(注・特に私的なニーズが強いわけではないので誤解無きよう)

共通善については、紺野先生の著書にも書いてある。
これも以前から自分がなんとなく感じていたことと同じなのだが、リーダーたるもの、
きれい事を躊躇無く本気で、いやらしく無く真剣に、すんなり大声で言えるような清々しさがないと
いけないと思う。企業も同じ。コソコソ商売していたって良い事はないし、
金儲けが悪い事はない。社会と健全に関わって経済を動かし、日本の将来につながる何かを
担えたら、それが理想に決まっている。
今読んでいる「美徳の経営」に書いてある、
「賢慮」型リーダーシップ
理想と現実を往還しつつ知を変換する、かつ清濁合わせ飲むようなしたたかさを持ったリーダー像
という言葉が私の理想のリーダー像そのもので、びっくりした。清濁合わせ飲むしたたかさ。
先生!この言葉大好きです。

4. コアコンピタンス、能力の罠
日本は戦後の経済復興を目指し、技術力を武器に欧米を追い抜いてきた。
だからこそ、自分たちの能力に自分たちでがんじがらめになっている。
いるなー、こういう人、結構見かける。もう完全に自己満足的に自分の作るものに
心酔しちゃってて、本来のゴールを見失っているパターン。器用なのに残念なヒト・・・。
日本はなぜそんな風な残念な国になってしまったんだろう。

5. 理想と現実を行き来する
プロジェクトを遂行する時、自分の中に理想の状態を思い描く。強く、強く。
強く描けば描くほど、ディテールまで具体的に成すべきことが見えてくるが、
同時に今自分がいる現実の状態からは、かけ離れていく感覚。
そのギャップに喘ぎながら、それでも諦めずにもう一度理想を思い出す。
そして次にやるべきことをすぐに実行に移す。その繰り返しだ。
途中で諦めなければ、80%くらいは達成できる。でも80%。だから最初に描く理想は
120%以上の絵じゃないとダメだ。
そんな自分の毎日の苦しみが、やっぱり必要な苦しみだったんだなーと、改めて感じた。

長くなってしまった。
というわけで、STRAMDは常日頃なんとなく感じていたモヤモヤを、経験豊富な講師の先生方が
ロジカルに紐解いて、新しい発見へと導いてくれる、私にとって本当に貴重な有り難い時間である。
そして読みたい本、知りたい事が数珠繋ぎで出てくる。大変だけど、人生においてこんなに
知識欲が刺激されることが学生を卒業した後にあるなんて、予想していなかった。
次回の知識経営論も楽しみだ。
「もちろんここにいるみなさんは読まれていると思いますが・・」の一言がきっと聞けるはずだから。

(2011.5.16 記)

《STRAMD》

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