2016年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院 2016年度 カリキュラム@デジタルハリウッド大学院

美的感覚錬成論1

日付
2016年04月20日 19:00~
場所
デジタルハリウッド大学院大学
受講生の感想

記:泉 佳子

STRAMDが始まって、初めてのグループに分かれての講義。
今回のテーマは「黄金比ー美的感覚に絶対の基準はあるのか?」。

まずは、黄金比CGの映像上映。
いくつかの数式が流れ、植物や動物を構成する要素へとどんどん繋がって展開していく・・・。これだけを観ると、この世の全てのものには、共通する“ある公式”があるような気がしてならなくなる。その正体を見破ろうとして、数々の数学者・科学者がとうとう割り出した比率「黄金比」。これこそが美しさの正体なのか?この公式通りに作れば、果たして美しいものができるのだろうかーー?

今度は実際に、コンパスと三角定規を使って黄金矩形を描いてみる。
まずは自分が美しいと思う矩形を描いてからスタート。私のは黄金比よりだいぶ横長でした…(笑)。資料を見ながらとは言え、黄金矩形を描くのはなかなか難しかったです。描いた後は黄金比スケールでちゃんと描けたかを確認したり、グループでお互いの名刺の比率を求めたりもしました。

比率=全体をふたつに分ける=原点の数学の話へ
黄金比を裏付けるものとして、土器や建築など、様々な例が出てきます。しかし焼成後の縮みや、建築後の沈み込みまで当時の人間が計算していたのか?西洋と東洋の様式の違いまで飛び越えて同じ比率でものを作っていたのか…?等々、疑問の残るものもあります。
ただ、証明可能な公式とまではいきませんが、確かに私たちの美的感覚と数学との間には共通点が多くあるように感じます。

ところで「数学と芸術(美術・音楽)の間には共通点がある」ということを考えるのに、偶然にも最近読んだ本にヒントがある気がしました。中島さち子さんという、ジャズピアニストで数学者の方が書かれた本の一部を引用します。

数学における発見は、「論理詰め」だけではなかなか得られないものです。発見の際には、何が一番自然なことであるかを自由に感じたり、背後にある正体を感じたり、思いもよらない類似性を身近なものから嗅ぎ当てる、人間の感性、情緒の力こそが、とても大事なのです。実際、数学における発見には、大抵「こう考えれば、こんなに美しい関係が見えてくるから、きっとこうなっているに違いない」という意識、無意識が働いています。それは、最初は直感的なものだけれど、だからこそ、本質をついていたりもします。
(中略)
また、時には、逆に、感性では「そんなわけない!」と思い込んでいたことが、数学で論理をただただ組み立て続けるだけで「裏切られ」、大発見となることもあります。「論理」も無味乾燥なものでは決してなくて、時には感性をも凌駕する、生き生きとした自由なものなのです。感性と論理は、互いに刺激しあいながら、互いを開放していくのです。
ーーー中島さち子『人生を変える「数学」そして「音楽」 教科書には載っていない絶妙な関係』

「美的感覚」という目に見えないものだからこそ、「黄金比」という分かりやすい、認知されている基準に頼ることも時には有効です。しかし、それではあくまで基準は自分の“外”にあるものであり、その基準に合わないものに美しさを感じることもあるでしょう。

既存の考えを疑う。なぜ「美しい」と思うのかを自分自身に問いかける。また、自分の考えたものが“美しいもの”になっているか、データベースを蓄積しておくことが大事なのだというお話でした。

今回の「黄金比」を考える起点とし、これから異業種・異文化の方たちと同じものを共有する際にどうアプローチすれば良いのか、改めて多角的な視野を持たなければ、と再確認する講義でした。

《STRAMD》

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